Japanese
English
特集 現代社会と家族—諸病態との関連から
現代女性の位置と摂食障害
The Present Status of Japanese Women and Eating Disorders
下坂 幸三
1
Kozo Shimosaka
1
1下坂クリニック
1Shimosaka Clinic
pp.593-602
発行日 1989年6月15日
Published Date 1989/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405204719
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I.現代女性を囲む情勢
昨今の摂食障害者の驚異的な増加とこれに伴う軽症例の増加とは疑うことのできない事実だと思う。私は現代社会の特徴を把握する能力を欠いているが,こんなにも摂食障害がありふれた行動障害となったということは,こんにちの社会にありふれた現象と一種の相関関係にあると考えるのが常識であろう。
現代社会について論じることはできないとしても昭和一桁生れの私の目に映った世相の表面的な変遷なら私にもわかる。このような変遷と摂食障害の増加との関係をここでは考えてみたい。私の日常の見聞ならびに患者とその家族とから聞いたこと。それらが世相判断の資料である。それは都市のサラリーマン家庭の暮らし方の一端を述べるということになるだろう。しかしそれはさほど片寄った材料であるとはいえない。日本各地の都市化現象とサラリーマン化現象とは,現代の日本社会の大きな特徴とみられるから。ちなみにNHK世論調査部が1984年12月上旬,全国の16歳以上から70歳以上にわたる国民3,600人を対象に,個人面接法を通して得た「現代の家族像」の調査結果によれば,現代家族の半数以上(58%)がサラリーマン家庭に属し,それはいわゆるブルーカラーの家庭(28%)と,いわゆるホワイトカラーの家庭(30%)とにほぼ二分されている。生活維持者が家業として農業・林業・漁業に従事している家庭は,9%と1ケタにまで激減してしまったとある。この資料をみてもサラリーマン家庭というのは,こんにちでは平均的な家庭像となっているといってよいことになる。
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