巻頭言
向精神薬による薬原性精神障害
挾間 秀文
1
1鳥取大学神経精神医学教室
pp.222-223
発行日 1989年3月15日
Published Date 1989/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405204669
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私が精神科へ入局した当時(昭和31年),精神科病棟における治療は電撃療法・持続睡眠療法・インスリンショック療法のいわゆる精神科特殊療法が主体で,そのほか日常用いる薬剤は抗てんかん薬・眠剤以外は,およそプロムカリ,抱水クロラールの水薬に限られていた。そしてごく少数の初発精神分裂病患者に対しクロルプロマジンが慎重に,というより半信半疑に用いられ,それらの患者の多くに多少とも錐体外路症状が認められていた。その後抗精神病薬,抗うつ薬の評価が決まり,精神科臨床一般においては続々と開発される向精神薬の使用に大胆となって,投与される薬物量は次第に増えていった。そのような風潮の中で,ある研究会の席上某先輩がこの種薬剤を長期間使用して,安全性は大丈夫かと警告された。若い私には忘れられない言葉であった。
医療処置の結果生じる不具合な事態に対し,医原性という言葉が用いられるようになったのはそれほど昔のことではない。最近では特に薬物の功罪に強く関心が向けられ,薬原性という言葉もできて薬物療法が一段と厳しく検討されるようになっている。向精神薬も例外ではない。
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