Japanese
English
特集 老年精神医学
老年期の人格と障害
Personality and Personality Disorder of Senescence
竹中 星郎
1
Hoshiro Takenaka
1
1浴風会病院
1Yokufukai Hospital
pp.47-55
発行日 1987年1月15日
Published Date 1987/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405204271
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
Ⅰ.老年期の人格
老年期の人格やその障害について語ることは,昭和10年代生まれの身には荷が重すぎる。しかし日常の老年精神医療の中では,人格偏椅のみならず,妄想や抑うつ,そして痴呆の臨床にとって,生まれてきた歴史を背景にもつ人格への目の必要性を痛感させられる。まして自らは未体験の老年という状況下での人格の反応を理解しようとするには,自分自身の人間観を拡げることが求められる。老年者の医療にあたっては人生や人間について学ぶことが必要であるが,医学や医療の場はまだ余りにそれについて貧困である。
ドイツの童話作家Hartlingの作品『ヨーンじいちゃん』の中の老人の言葉は含蓄がある。それは老人がいつも“ちっと”という語を口ぐせにしている理由を孫が問うことへの答えである。「ちっとというのは“少し”ではない。もっとなにかがある……。ヒットラーに反対して捕えられ30年の刑を宣告された。もう決して生きて出ることないと思うとる牢屋の中では“ちっと”というのはなかなか重い。」10)
Copyright © 1987, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.