Japanese
English
特集 老年精神医学
老年期精神障害の疫学
Epidemiology of Mental Disorders in the Elderly
柄澤 昭秀
1
Akihide Karasawa
1
1東京都老人総合研究所心理・精神医学部
1Department of Psychiatry & Psychology, Tokyo Metropolitan Institute of Gerontology
pp.35-46
発行日 1987年1月15日
Published Date 1987/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405204270
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
I.はじめに
老年期は精神障害の有病率が高い。このことは人口分布の高齢化に伴って,精神障害老人の実数が確実に増加することを意味する。この現実に適切に対処していくためには,何よりも先ず実態を正しく把握して,その科学的分析を行うことが必要であり,これは疫学的研究に期待されるところが大きい。しかし,精神医学領域では疫学的調査研究の遂行に多くの制約や困難が伴うため,その期待に応えられるほど十分な成果がまだ挙げられていない。老年期にみられる精神障害の中では,痴呆に関するデータは比較的多いのであるが,機能性疾患に関してはまだデータが僅かしかない。このような現状であるが,今この領域において,どの程度のことがわかっており,どんなことが今後の課題として残されているかを明らかにしておくことは決して無駄でないであろう。疫学として取り上げるべき領域は広いが,そのすべてに言及することは出来ない。その一部は他に述べたこともあるのでここでは問題を主として,老年期精神障害の有病率注1)と発生率注2)ということに絞り,これまでの研究成果の概要を述べる。
Copyright © 1987, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.