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2015年3月で東日本大震災から4年が経ちます。東日本大震災を受けて東北大学に新設された災害科学国際研究所と東北メディカル・メガバンク機構という2つの組織での活動を通して,特に強く感じることを何点かご紹介させていただければと思います。
災害科学国際研究所は東日本大震災からの復興と巨大災害の被害軽減に向けた実践的な防災と災害対応に対する科学の礎を築くことを目指して人文科学,社会科学,自然科学にまたがる7部門38分野からなる組織として新設されました。その中の災害医学研究部門8分野の1つとして災害精神医学分野が設置されていますが,本研究所での学際的な災害科学への取り組みを始めて感じたことに,防災の枠組みや防災に関する科学は,工学領域を中心に発展し,その中に医学や医療・保健の領域が十分に包含されてきていないことがあります。たとえば,国内外に災害科学に関する研究施設は複数ありましたが,いずれも災害医学に関する研究部門を有しておらず,私達の研究所は世界で初めて医学研究を統合する災害研究所として,災害科学の領域で関心を集めています。2015年3月,国際的な防災の枠組みにおいて重要なイベントとして,仙台市で第3回国連防災世界会議が開催されます。阪神淡路大震災から10年の節目にあたる2005年に神戸市で第2回国連防災世界会議が開催され,災害に強い国・コミュニティを構築するための指針である兵庫行動枠組が採択されてから10年が経過し,東日本大震災をはじめその間に起こった大災害の教訓をふまえて,その見直しが行われることになります。10年前の兵庫行動枠組においても,医療・保健に関する記載はほんのわずかでした。現在,第3回国連防災会議の中で,災害医療・医学のことやメンタルヘルスのことを勘案した防災体制の充実に向けた検討がなされるよう,各国の災害精神医学関係者や国連関係者を交えて検討を行っているところです。
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