巻頭言
精神科医療を改革するものは誰か
秋元 波留夫
1
1東京都小平市社会福祉法人ときわ会
pp.678-679
発行日 1984年7月15日
Published Date 1984/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405203783
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私はかつて本誌の巻頭言で「消されてしまった中精審」という文章を書いたことがある(精神医学第21巻第3号,昭和54年3月15目)。昭和40年6月に公布された改正精神衛生法で,わが国の数百万にのぼると思われる精神障害者の医療と福祉を改革し発展させるための最高の審議機関として制度化された中央精神衛生審議会(中精審と略す)は昭和53年5月,「審議会等の整理等に関する法律」という政府の行政機構いじりの事務的とりきめによって廃止され,公衆衛生審議会なるものの一部会に格下げされてしまった。そのいきさつと抗議の思いを書いたのがあの文章である。
中精審の廃止が端的に示しているわが国の政治と行政の当事者の精神障害問題に対する無知と偏見は依然として改められそうもない。このような精神衛生行政の状況と無関係ではあり得ない「悪徳精神病院」の存在は私たち精神科医療関係者にとって屈辱の思いに堪えない痛痕事である。その責任者は徹底的に糾弾され,法によって厳しく処断されるのは当然である。しかし,目前の「悪徳精神病院」をただ攻撃するだけで,そのような奇怪な悪徳病院がどうしてまかり通ってきたのか,こんなことが起きるのを防ぐにはどうしたらいいのか,など,問題の本質を衝く論議と具体的施策の提言が行われない限り,同じように事件がくりかえされることはこれまでのわが国の精神科医療の歩みを顧みれば明白である。
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