Japanese
English
短報
慢性アルコール症者にみられたCentral Pontine Myelinolysis(CPM)の1例
A Case Report of Central Pontine Myelinolysis (CMP) due to Chronic Alcoholism
市川 淳二
1
,
小山 司
1
Junji Ichikawa
1
,
Tsukasa Koyama
1
1北海道大学医学部精神医学教室
1Department of Psychiatry and Neurology, Hokkaido University School of Medicine
pp.425-427
発行日 1984年4月15日
Published Date 1984/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405203751
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
I.はじめに
Adamsら1)は1959年,橋底部に境界明瞭な左右対称性の脱髄病巣をもつ4例をCentral Pontine Myelinolysis(CPM)と名付けて報告した。以後,文献的には200例近くの報告がある。病因はいまだ不明であるが,最近ではアルコール症,栄養不良,電解質異常(とくに低Na血症),抗利尿ホルモン不適合分泌症候群(SIADH)などとの関連が指摘されている。また,その頻度も明らかではないが,アメリカでは剖検によって比較的高頻度(0.2514)〜4.77)%)に発見されている。その基礎疾患として,アルコール症の占める割合が高い(6010)〜77.69)%)のが特徴的である。しかし,わが国では松岡ら8),白木ら11)が1964年にCPMを相次いで報告して以来,現在までに文献上11例を数えるが,アルコール症の例は見当たらない。またEndoら3)の報告によると,連続1,000剖検例中636例の脳について検索し,そのうちの37例(5.8%)にCPMが発見されたが,アルコール症はわずかに1例に過ぎなかった。
これまでCPMの臨床診断は困難で,すでに報告された症例の大多数は剖検によって病理学的に診断されたものである。しかも実験モデルは容易に得られず,有効な治療法もないとされてきた。しかし最近になって,聴覚誘発反応12)やCT2,9,13)を用いてCPMを生前に臨床的に診断することが可能となった。
このたびわれわれは,臨床症状に乏しく,CTによってはじめて診断することのできたCPMの1例を経験したので報告する。なお,併せてCPMに関する最近の知見について考察した。
Copyright © 1984, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.