Japanese
English
特集 聴覚失認
語音弁別能の障害
Impairment of Speech Discrimination
佐藤 恒正
1
Tsunemasa Sato
1
1東京警察病院耳鼻咽喉科
1Department of Otolaryngology, Tokyo Metropolitan Police Hospital
pp.363-371
発行日 1983年4月15日
Published Date 1983/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405203567
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I.はじめに
オージオロジーの進歩に伴い,病巣診断を目的とした精密聴力検査がいろいろと工夫され,発達してきたが,方法論的に聴力検査は聴覚心理学謎手法を用いた自覚的検査と,ME的手法を用いた他覚的検査に大別される。一方,難聴を鑑別診断の見地よりみるとき,感音難聴,特に後迷路障害の部位診断はきわめて重要なテーマであるが,現行の他覚的聴力検査は,ABRの波形分析,あぶみ骨筋反射の測定などを除き,刺激音が単純であるために,鑑別診断を目的とするときそれらの有用性は高くない。すなわち,域値上の複雑な音刺激を正しく弁別する能力は,ヒトのみに許された高度な機能であるために,これを利用した自覚的聴力検査の方が現在なお重要な方法とおもわれる。特に,ことばを検査音とする語音聴力検査は,本来,難聴者の社会適応性をみる目的で発達してきたが,上記の理由により,不可欠の方法である。
今回のテーマである聴覚失認,および純粋語聾の聴能に関しては,まず語音聴力障害の程度,性質を知ることが,最も重要な課題である。そこで,本稿では著者が日常,難聴の鑑別に利用している語音聴力検査法について紹介し,典型的な聴覚失認症例について述べ,さらに周辺疾患としての失語症を呈した側頭葉障害群の語音聴力検査成績を検討し,検査の意義,聴覚失認様症状の発現機序などを推定したい。
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