Japanese
English
特集 薬物と睡眠をめぐって
睡眠促進ペプチド研究の現況
Status quo of Studies on Slecp-promoting Peptides
井上 昌次郎
1
Shojiro Inoue
1
1東京医科歯科大学医用器材研究所
1Institute for Medical and Dental Engineering, Tokyo Medical and Dental University
pp.127-133
発行日 1983年2月15日
Published Date 1983/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405203538
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I.歴史的背景
睡眠物質研究の歴史は,意外に古い。20世紀の始め,フランスのLegendreとPiéron23)は,断眠犬の脳脊髄液と血清とに催眠作用のあることを報告している。彼らは,6〜15日も眠らさないでおいたイヌから,脳脊髄液を抜き取り,これを正常なイヌの脳室内に注射した。すると注射されたイヌは,腹ばいになったり,丸まったりして眠ってしまった。血清の脳室内注射も同様の効果があった。この結果を彼らは,こう説明している。断眠犬の脳脊髄液と血液には,長期間眠らなかったことにより,疲労による毒素が溜っている。これは睡眠毒素(hypnotoxin)と呼ぶべきもので,脳に作用して眠りを引き起すのだ,と。
この実験は,約20年後になってアメリカのSchnedorf and Ivy34)によって,より厳密に追試され,ほぼ確認されている。この時期つまり1930年代は,内分泌学の発展期で,多くのホルモンが発見されている。睡眠についても,毒素という二次産物でなく,睡眠ホルモンそのものの存在を仮定して,これを探そうとした実験やその実在を示唆する実験結果が,当時いくつも報告されている。
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