Japanese
English
研究と報告
境界状態の身体性についての現象学的考察—身体が傷ついたことを契機として境界状態から精神分裂病へと陥った症例をめぐって
A Phenomenological Study on a Case of Borderline State
渡辺 雄三
1
,
江口 昇勇
1
,
安藤 文夫
1
Yuzo Watanabe
1
,
Norio Eguchi
1
,
Fumio Ando
1
1松蔭病院
1Matsukage Mental Hospital
キーワード:
Borderline state
,
Body(Leiblichkeit)
,
Body boundary
,
Suicide
Keyword:
Borderline state
,
Body(Leiblichkeit)
,
Body boundary
,
Suicide
pp.587-594
発行日 1982年6月15日
Published Date 1982/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405203424
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抄録 離人感,強迫観念,関係念慮を主症状とする境界例とみられながら,性的体験,妊娠中絶手術といった身体的危機状況の度に混乱を深め,ついには自殺を目的として自己の身体を傷つけることによって精神分裂病症状が著明になった症例をとりあげて,境界状態の精神病理学的構造を,特に身体性の面から現象学的に考察した。そして身体という枠,あるいは枠としての身体性という概念を導入するてとによって,枠としての身体性の成立がそもそも問題化し,他者性が有無を言わせずに身体性の枠を越えて自己の内部にまで深く浸透して自己性を剥奪していく精神分裂病と対比的に,境界状態を,身体という枠上において他者性の圧倒,侵害が問題化している存在,あるいは,枠としての身体性によって危機的ながら他者性に脅かされる自己性をようやく維持している存在としてとらえようとした。また枠としての身体性という概念を用いることによって,分裂病と境界状態の連続性について考えると共に,その精神療法的な手がかりを身体性への関与の中に見ようとした。
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