症例にみる精神身体医学(最終回)
内科外来における分裂病境界領域症例
石川 中
1
1東大心療内科
pp.2101-2103
発行日 1973年12月10日
Published Date 1973/12/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402205231
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はじめに
前回には,内科外来における抑うつ症の例について述べたが,今回は分裂病境界領域の症例について述べる.前回にも述べた如く,最近,抑うつ症についてはは仮面うつ病(masked depression)という概念によって,広く,精神科以外の臨床各科の患者としてまぎれていることが知られるようになった.しかし,分裂病境界領域の症例が,同様に各科の患者としてまぎれていることについては余りよく知られていない.
しかし筆者らの心療内科外来における経験によれば,各科から紹介されてくる患者の中には,かなりの数に,分裂病境界領域の症例がある,その理由として考えられることは,分裂病の初期には,患者はしばしば心気的になって,身体機能の種々の異常を訴えることが多い。ことに患者には病識がないから,自分の身体症状を,何らかの身体機能異常によるものと信じているのである.その結果,彼らはまず精神科以外の各科を訪れることになる.そればかりか,これらの患者に対し,精神科に行けといっても,頑強に抵抗して,受診を拒否するものである.その結果,当然のこととして,身体的な治療の効果が上らないので,年余にわたって慢然と外来に通院を続けるということになるのである.
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