巻頭言
科学論文を書く
稲永 和豊
1
1久留米大学医学部精神神経科
pp.108-109
発行日 1981年2月15日
Published Date 1981/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405203213
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科学論文の書き方について教わるのはいわば口伝的な方法によるものであって,今迄きびしい教育を受けたこともないし,また教室の若い研究者にどのように科学論文を書くかを教えたこともない。しかし考えてみると実に大切なことである。いくつかの雑誌の査読者(referee)としてかなり多くの論文を読ませてもらったが,感心させられるような立派な論文もあるし,どうかと思われるような論文もある。論文の最後に「……教授の御校閲を感謝する」と謝辞が述べられているが,教授の校閲が行なわれているにしてはあまりにもひどいと思われる論文もある。
査読の経験を通じて希望したいことは,邦文の論文であれば字句の誤りを少なくしてもらいたいということである。現在医学部を卒業した若い研究者の中にも字句の誤りが多い人がいるのに驚かされることがある。「臨床神経学」の査読を数年間担当したが,論文の内容そのものよりも字句の訂正にかなりの時間をさかれたものである。日本人にとって母国語で論文を書くのに辞書など不必要であるという先入観があるらしいが,適当な国語辞典を側において,少しあやふやな点があれば直ちに辞書をひく習慣をつけて欲しいものである。たとえば,岩波の国語辞典の最新版を持っていて,論文を書く時はいつも側におくようにしておけばよい。
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