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I.はじめに
筆者が,厚生省からWHOに出向してから約2年が経った。WHOを外から眺めていると,一体何を指向して活動しているのかはっきりしないものと思う。しかし中に入って実情がわかると,世界的な精神医学の動向に呼応して活動が体系づけられ,運営されているのがわかる。時には政治的外圧により,又,時には内部人事にからんで,指向が変ることもあるが,中期,長期にわたって見ると,確かに一つの流れのあることがわかる。
WHO精神衛生研究活動の中で,日本人専門家の果たす役割は大きいはずであるが,今までのところ,残念ながら大いに寄与しているとは言えない。言葉の問題も一つにはあるだろうが,何よりもWHOとの接触の機会の少ないことが,その一番の原因であろうと思う。
WHO加盟150余カ国の大部分は開発途上国である。WHO及び国連のポリシーからして,これら開発途上国には優先的に事業が流れるので,これらの国々の専門家とWHOとのつながりは深い。又,先進国の欧米諸国は,古くからそれぞれの旧植民地とのつながりがあり,WHOからの技術援助の大部分はこれらの国々の専門家によって行われてきたので,これ又WHOとのつながりは密である。極端に言えば,先進国の中で,WHOに米国,ソ連に次ぎ3番目の拠出金を出している日本だけが,WHOとのつながりが薄いと言える。
筆者は,この2年間に,なるべく多くの日本の専門家に事業に参加して頂くように配慮してきた。その結果,徐々にではあるが,日本の専門家とWHOとの協力関係は改善されてきているように思える。
そこで,より一層多くの日本の精神衛生分野の方々に,WHOの事業を御理解頂き,積極的に参加して頂くために,ここにWHO精神衛生研究活動の概況を御紹介する次第である。
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