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I.はじめに
1979年10月,ワシントンD. C. に在るWHOの汎米州地区事務局PAHOにおいてWHO精神衛生部主催のうつ病に関する総合的研究シンポジウムが行なわれた。従来からWHOプロジェクトとして行なわれていたうつ病疾病分類の問題,うつ病の標準評価の研究,うつ病の追跡研究,一般診療科におけるうつ病の実態の研究や生物学的精神医学領域でのうつ病の成因,病態の研究,薬物治療の比較研究などに関与してきた世界各国の研究者を中心に,疾病分類や一般保健におけるうつ病の問題,特に社会的・心理的側面の研究に独自な研究を行なってきた研究者殊に米国NIMH,New Havenグループ,ロンドングループも加わってほとんど全世界のうつ病の研究者が一堂に会してそれぞれの研究の現状と問題点を討議した。これは同時に国際疾病分類ICD-Ⅸが発効し,米国ではNIMHのPsychobiology of Depressionの協同研究プログラムが進められ,米国精神医学会のDSM-Ⅲ(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders Ⅲ)草案が討議され,今後のうつ病の総合的理解と対策を展望するのに好都合な時点であった。この会議にはPAHOの精神衛生のRegional Advisor,Dr. R. Gonzalesが組織責任者として働いてくれたが,WHO本部からの出席者の他の正式招待参加者は22力国からの31名であり,カナダ,北米,南米,アジア,ヨーロッパ,南アフリカの専門家が参加した。しかし我が国からは新福尚武教授,山下格教授と筆者が報告を行なったが,米国NIMHの研究者やChicago,日本側の同僚もオブザーバーとして参加されていた。この会議は別表のプログラムの様にうつ病の臨床診断や疫学,比較文化の側面から生物学的・心理学的成因,治療,一般診療科との協力の問題,国際協力の問題などほとんどの重要面が網羅されていて,内容は極めて濃密かつ広範であるので,この報告では印象的記述のみにとどめざるをえない。内容は近く出版される予定があるので会議の雰囲気と今後のうつ病の国際研究の趨勢にふれるのみとしたい。
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