話題
「国際筋シンポジウム―筋原線維形成の分子メカニズム」報告記
松田 良一
1
Ryoichi Matsuda
1
1東京大学大学院総合文化研究科・教養学部
pp.319-320
発行日 1997年8月15日
Published Date 1997/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425901211
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骨格筋や心筋における筋原線維は,ウイルス封入体と同様,種々のタンパク質分子の自己集合によって作られた高次構造である。しかし,筋原線維を適当な濃度の塩と尿素を含む溶液に対して透析し,その大半を可溶化した後,再び透析によりおだやかに塩と尿素の濃度を下げても二度と秩序ある構造の筋原線維は再生できない。つまり,筋原線維の形成はタンパク分子の自己集合する場と順序,速度が巧妙に制御されてはじめて成しうるものと想像される。筋肉は脊椎動物の体の主要組織の一つであり,われわれの体内でもこの筋原線維の形成は絶えず大規模に起きているにもかかわらず,この筋原線維形成の分子的理解は進んでいるとはいいがたい。
平成8年11月7日から9日までの3日間,千葉大学西千葉キャンパスの「けやき会館」において「筋原線維形成の分子メカニズム」をテーマに国際シンポジウムが開催された。海外および国内からの招待研究者それぞれ25名と12名による口頭発表と,公募による18題のポスター発表が行われた。このシンポジウムの主催校である千葉大学の丸山工作学長が自ら発見した弾性タンパク質コネクチンに関する最新の知見を紹介し,続いてHoltzer,Fischman,Epstein,Perriard,Schiaffino,Bandman,嶋田,石川,大日方ら筋原線維形成研究の第一人者と目される研究者達が一堂に会し,最新情報を発表し議論したのは圧巻であった。
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