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第2回日本生物学的精神医学研究会は昭和55年3月28,29日の2日にわたって岡山大学精神神経科大月三郎教授を会長として岡山衛生会館において開催された。第1日の午後は総会,会長講演,シンポジウムにあてられた。会長講演は大月三郎教授の「精神病状態とてんかんとの拮抗関係におけるカテコールアミンの役割」と題したものであり,精神病状態,とくに幻覚妄想状態などの分裂病様状態とてんかんとの間に拮抗関係があることが古くから注目されていたが,岡山大学では実験てんかんモデルとしてKindling Preparationを,実験精神病モデルとしてメトアンフェタミンによる逆耐性現象モデルを用い,精神病状態とてんかんとの生物学的拮抗関係に,脳カテコールアミン,特にドーパミン作動系が重要な役割をもつことが示された。この問題は多くの研究者が関心をよせている問題であり,Lamprecht(1973)は「中脳辺縁ドーパミン系のフィードバックの制御の障害がてんかんと精神分裂病との間の“神経化学的橋わたし”をするものであろう」と述べている。古くから想定されていたてんかんと精神分裂病との拮抗関係が新しい目で見直されるにつけても,臨床的観察の中から重要なヒントが得られることを忘れてはならない。
シンポジウム「躁うつ病の生物学」は加藤伸勝,更井啓介両教授の司会で6人の演者の発表が行なわれた。高橋良教授は疾病分類についてうつ病の国際的共同研究の現況について述べ,大熊輝雄教授は躁うつ病の神経生理について,特に最近の睡眠研究の成果にもとづいて述べた。躁うつ病とアミン代謝については仮屋哲彦氏がマイクロアミンの問題も含めて解説した。またカテコールアミンとインドールアミンとの相互関連性についても強調した。躁うつ病の神経内分泌学—成長ホルモン分泌反応に関する知見は高橋三郎教授によって解説された。この方面の研究は未だ混沌としている感じであった。抗うつ剤の血中濃度と治療効果については渡辺昌祐教授によって報告がなされたが,かなりの資料が集まりつつあるが,臨床に役立つ確実な知見はまだそろっていないというのが現状のようである。最後にうつ病の動物モデルと題して鳩谷龍教授の報告が行なわれた。強制走行ストレス法を用いたモデル実験であり,このようなアプローチも重要であることがわかった。うつ病の動物モデルとしては他の研究者によって別のモデルと称するものがつくられているが,それぞれのモデルについて詳しい検討が必要であろう。
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