Japanese
English
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
I.はじめに
うつ病の患者に抗うつ薬を投与して治療を行なうさい,1)どのような背景因子(性,年齢,既往歴,家族歴など)あるいは臨床病像(病型,病状表現つまりはtarget symptom的な考え方)をもつとき,どのような薬剤を科学的に選択するか,2)どのような副作用に注意しなければならぬか,ということが具体的に臨床家の課題となる。
1)については,妥当性をもった臨床評価尺度を使用して薬剤間の比較を行なった二重盲検比較試験の成績をみてゆけば,信頼性のある知見が得られ,これをつみ重ねてゆくことによってある程度solidな知識が得られるはずであるが,なかなか現実には矛盾し合う知見も多くて,常識が確立したとはいい難い。それでもまとまったいくつかの二重盲検のdataが次第につみ重ねられつつあり,何とかものが言えそうになってきているが,膨大な解析を必要とするし,機会をあらためて発表することとしたい。
2)の問題については,近年の伊藤・三浦の大著1)(1973)が,かなりの知識を網羅していると思う。抗うつ薬に関しては,三浦はDavisら(1968),三浦ら(1972),Raskin(1968)の綜説を参考にして述べている。
この綜説のなかにほとんど抗うつ薬の副作用の問題は網羅されており,ここであえて述べるのは屋上屋を架するのきらいがなきにしもあらずなのだが,伊藤・三浦らの総説のあとに知られた問題について,ここでまとめを試みるのも意味があると考え,主としてSide Effects of Drugs, Annual 32)(1979)と,海外副作用情報研究会による副作用情報のうち,抗うつ薬に関する項をまとめて今日示すことにした。御参考用のメモとして頂ければ幸いである。
なおここでは問題をMAOI以外の(主として)3環抗うつ薬の副作用にしぼることとする。4環抗うつ薬あるいはその他MAOI以外の抗うつ薬も記載の便宜上3環抗うつ薬と総称させて頂くこととする。
Copyright © 1980, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.