古典紹介
—Richard von Krafft-Ebing—Epileptoide Dämmer- und Traumzustände
浜中 淑彦
1
Toshihiko Hamanaka
1
1京都大学医学部精神神経科
1Aus der Psychiatrischen und Nervenklinik der Universität Kyoto
pp.619-637
発行日 1977年6月15日
Published Date 1977/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405202628
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最もよく知られた神経症Neurose訳注1)の一つに数えられるものがてんかんであることは確かである。近年の医学は,古典的なけいれん発作の代理症Substitutionや等価症Aequivalentとして,一連の運動性または血管運動性症状や精神症状の症状群があり,このような症状群は数カ月,いな数年間にすらわたって,意識喪失を伴う強直性・間代性全身けいれんのかたちで出現する通常のてんかん発作にとってかわり,この疾患を仮面で隠すことがあるのを明らかにした。
フランスの研究者,殊にFalretとMorelの尽力のおかげで,小発作と大発作petit und grandmal訳注2)の型に関する限り,精神てんかんpsychische Epilepsieについてのかなり精密な知識が得られた。それだけでてんかん神経症の領域における精神症状群の系列が完結したわけではないことは,GriesingerがArchiv für Psychiatrieの第1巻1868に収録した様々な知見の教えるところである。Griesingerは,彼の観察例では明確なてんかん発作はないにしても,その代りに持続時間の長短はあれ眩暈Schwindel,夢幻状態Traumzustände,あるいは突発する不安発作Angstanfälleが見出されるという意味で,これを類てんかん状態epileptoide Zuständeと呼んでいる。そのような状態に襲われた患者は,幼時しばしば意識喪失を伴うけいれんを起こしたり,頭部外傷を受けたことがある。
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