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特集 青年期の精神病理
青年期病跡学
Pathographical Study on Adolescence
福島 章
1
Sho Fukushima
1
1東京医科歯科大学難研犯罪精神医学研究室
1Dept. of Criminal Psychiatry, Tokyo Med. & Dental Univ.
pp.1295-1303
発行日 1977年12月15日
Published Date 1977/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405202697
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Ⅰ.青年期病跡学
青年期病跡学の課題はいうまでもなく,精神的に傑出した人物(以下に簡単に天才と略称する)の青年期の観察であり,とりわけ青年期に出現した精神病理現象と創造性との研究が問題となる。
もちろん,すべての天才が青年期にその創造性を開花させるわけではなく,音楽の才能のようにすでに幼少年期にすでに出現している場合もあろうし,また成人期以降に主要な業績が認められる場合もある。前者の場合は精神病理と創造性は直接の関わりを持たないか,あるいはすでに開花した才能の性質・成熟・方向に影響を与えるにすぎない。また後者の場合は,青年期の精神病理は成人期以後の創造にあまり意味をもたない場合とか,人格の成熟や人生行路の変化や創造への動機づけに対して「間接的な」条件を設定するにすぎないであろう。もし青年期の精神病理が天才たちを解体・破滅させるほどに危機的なものであるなら,その後の創造の機会は奪われることになるわけで,バトグラフィの対象とはなり得ない。しかし,青年期の危機がなんらかの方策や防衛機制によって延期され,包み隠されたまま,成人期以後に持ちこされ,そこで再燃し,その危機に対する対応として創造が動機づけられるなら,それは広い意味での青年期病跡学の範囲に入るであろう(この問題はⅢに論じる)。
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