Japanese
English
特集 今,なぜ病跡学か
病跡学と精神分析
Pathography and Psychoanalysis
新宮 一成
1
Kazushige SHINGU
1
1京都大学大学院人間・環境学研究科
1Graduate School of Human and Environmental Studies, Kyoto University
キーワード:
Pathography
,
Psychoanalysis
,
Transference
,
Identification
Keyword:
Pathography
,
Psychoanalysis
,
Transference
,
Identification
pp.137-144
発行日 2001年2月15日
Published Date 2001/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405902371
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エジプトのピラミッド
以前に報告したことのある患者の言葉から,病跡学と精神分析学の関係を論じ始めることをお許しいただきたい。筆者はその言葉に関して,機知との関連をすでに指摘はしたが,その際にはむしろ笑いとの関係を論じることが主眼であった。今回は機知としての意義を取り上げたい。いうまでもなく,機知は一つの創造行為である。しかも以下に見るように,ここではその機知が,分裂病の症状である支離滅裂ときわめて近いところで発生している。この事実は,創造行為と症状との関係を探究するために病跡学的な視点を導入することを要請する。次に再録するその言葉は,精神病の発病初期にあった男性患者によって,初診を受け持った医師との会話において述べられたものである。
「(どうしましたか?)足が長い,ハンサムだ,私の会社では,まあそんなものですわ。現実を踏み越えた,倫理的な実験台ですかね。そこにおいて,一つの仮定ができてくると,そういうものですかね。(なにかお困りのことはありませんか?)うーん,それは愚問ですな,誰しも耐えるべき欲望というものがあると思うんですがね,まあ,引き金が引かれて穴があいてからでは,エジプトのピラミッドですわ。(ピラミッドがどうかしましたか?)そこからは先生の専門領域と違いますか。」12)。
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