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研究と報告
神経症の比較精神医学的研究—三重県四日市市,鳥羽市,度会郡南島町の調査から
Transcultural Psychiatric Study of Neurosis
東村 輝彦
1
,
神谷 重徳
2
Teruhiko Higashimura
1
,
Shigenori Kamiya
2
1山田赤十字病院神経科
2三重大学医学部精神神経科学教室
1Dept. of Neuropsychiatry, The Japanese Red Cross Hosptial, Yamada
2Dept. of Neuropsychiatry, Mie Univ. School of Medicine
pp.683-691
発行日 1974年7月15日
Published Date 1974/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405202207
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I.はじめに
1960年後半以降のめまぐるしい社会の動きは,好むと好まざるとにかかわらず,精神医学をその狭い領域のみにとどまらせず,社会や文化に関与させるようになり,社会精神医学的な研究も多くみられるようになった。しかしながら神経症やうつ状態に関しては,状態像の変化や心因の問題などについては多くの報告があるが1〜9),統計的な報告はほとんどみられない。われわれは,現在の激しい社会の変動が,神経症やうつ状態の患者にいかなる影響を及ぼしているかその実態を知るために,昭和45年,46年,47年の3年間にわたって三重医大塩浜病院精神神経科と山田赤十字病院神経科を訪れた初診患者の中で,16歳以上の神経症ならびにうつ状態の患者の中から,四日市市,鳥羽市,度会郡南島町の居住者333名(男150名,女183名)を選び比較検討した。これらの地域を選んだのは,塩浜病院の所在地である四日市市は,わが国の近年の高度成長経済を支えてきた工業開発地の代表的な一地域であり,山田赤十字病院の診療圏に属している鳥羽市は,古い日本の習俗や慣習が残されている離島などを含めて今や観光開発の荒波にさらされている地域であり,また南島町は昭和46年に過疎地域に指定されたほど人口の減少の激しい農漁村であり,いずれも現在の社会的状況を象徴的に表している地域と思われるからである。
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