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I.はじめに
昭和50年の日本での死亡率順位(人口10万対)をみると,①脳血管疾患(24.8),②悪性新生物(19.4),③心疾患(14.1),④肺炎と気管支炎(5.3),⑤不慮の事故(4.7),⑥老衰(4.3),⑦自殺(2.8)……となっており,年間33,280人が不慮の事故死とされている50)。年齢別死因では不慮の事故は0〜24歳までは第1位であり,25〜29歳でも第1位の自殺に次ぐ第2位である。不慮の事故死の内訳では自動車事故が最多の42.5%である50)。たとえ死亡に至らずとも,種々の事故での負傷や後遺症による受診者は外科領域のみならず精神神経科の日常臨床でもよくみられている。事故や自殺は未然に防止するのが望ましく,その発生に関する要因が種々の点から論じられている。ここでは事故原因のうち,従来,人的要因の1つとして取り上げられてきた「事故傾性accident proneness」の問題について,主として精神医学的な面からの概観を試みることにする。まず,事故の種類と原因につき簡略に触れ,事故傾性に関する用語と概念を検討し,精神分析的および心身医学的観点からの研究,および児童の事故や産業・交通災害に関する研究などについて述べる。
事故accident,Unfallとは一般には,予期されずに(外部からの力により)急激に生じた出来事で,その結果として人的傷害や物的損害を生じることとされている。この際に,それが無意図的な,不慮の,予測不能のものであったかどうかは種々の点から問題になる。意図的な外力によるものは,他者からの加害行為となるが,意図的か否か,どの程度意図的かは判定困難な場合もあり,当事者の認識と客観的観察にも差が生じうる。たとえば,交通事故でも加害者と被害者が簡単には区別し難い場合もあり得よう。
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