特集 薬物依存をめぐる諸問題
麻薬・覚せい剤等の乱用問題とその対策
山本 晴彦
1
Haruhiko YAMAMOTO
1
1厚生省薬務局麻薬課
pp.842-850
発行日 1984年12月15日
Published Date 1984/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401206962
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■はじめに
麻薬をはじめとする薬物乱用問題は,あへん戦争などの例にも見られる通り,古くから大きな社会問題となり,各国において,また,国際的なレベルにおいてこれに対する対策が工夫されて来た.それにもかかわらず,現代社会においてもこの問題を克服出来ず,むしろ,科学技術の進展とともに乱用される薬物は多様化し,また,交通・運輸・通信手段の発達に伴って不正取引きの巧妙化,広域化が進み,薬物乱用問題に悩む国の数は増加しつつある,国連の麻薬委員会資料によると,1982年各国から報告された押収量の総量は,モルヒネ(2.2t),ヘロイン(6.1t),コカイン(12t),及び大麻草(6,222t)と1946年,統計をとりはじめて以来最高の値となっている.無論,世界的に報告体制の整備が進んで来たこと,取締りが強化されて来たことなどの要因を考慮する必要があるが,逆に言えばそれだけ力を入れて薬物乱用の撲滅に当っているにもかかわらず,多量の薬物が不正に取引きされ,乱用されているという,薬物乱用問題の根深さを示しているといえよう.わが国もその例外ではなく,現在,覚せい剤をはじめとする薬物乱用問題は憂慮すべき状態にあり,暴力団関係者など一部特定の社会階層に固有な問題としてのみ片付けることの困難な状況になっている.
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