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特集 痴呆の臨床と鑑別
痴呆と大脳病理学
Dementia and Neuropsychology
大橋 博司
1
Hiroshi Ohashi
1
1名古屋市立大学神経精神医学教室
1Dept. of Neuropsychiatry, Dept. of Med., Nagoya City Univ.
pp.332-338
発行日 1973年4月15日
Published Date 1973/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405202002
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I.はじめに
「自我がその行動の論理的統合を行なうことの不可能,すなわち人間の知的構造の基本障害,これが痴呆の定義である。痴呆とは判断の機能を失った自我の病的形態である」(H. Ey13))。このような高度の人格の解体は一般には大脳全体の広範囲にわたる病変によって出現するものである。しかし脳の局所的病変がある程度にまで広がれば,臨床的に痴呆と呼んでいいような状態が現われうるであろう。そのさい,その部位によって症状にも多少の差はあろうし,それゆえに元来局所症状としての言語・行為・認知障害や精神障害をあつかうべき大脳病理学――最近の名称では神経心理学Neuropsychology――も痴呆への接近を試みる意義があろう。
また痴呆といえば,厳密には知的操作の予備条件ともいうべき記憶や言語,高次の感覚・運動機能などの障害とは区別すべきであろうが,現実にはこのような道具障害を合併した症例も少なくないし,また純粋の知性障害と道具障害とがきっぱりと弁別できぬばあいも決して少なくない。したがって本稿ではまずコルサコフないし健忘症状群とそれに関連した痴呆について述べ,次に失語症と痴呆との関わり合いや前頭葉症状と痴呆との関係などについて考えてみたい。
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