連載 症候学メモ・13
高次大脳機能障害による偽性痴呆
平山 惠造
1
1千葉大学神経内科
pp.62
発行日 1986年1月1日
Published Date 1986/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406205643
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◆老年痴呆と診断されたものが,実際にはある領域の脳梗塞である場合がある。年配の患者やその家族が物忘れがひどくなったといって来院し,物や人の名前がいえない,新聞が読めない,字が書けない,計算ができない,ということから老年痴呆と診断される。一見,もっともな話である。
◆子供や孫の名前がいえない,日常使っている物品の名がどうしてもいえない,ということは健忘失語あるいは喚語困難といわれる症状であって,「ぼけ」のための症状ではない。従って,言えないものもあるが,正しく言えるものもあり,言えない時と,言える時とがある。いろいろな人名を上げて,そのような名前の首相がいたかと聞くと正確に選び出すことができる。いえない物品名もこちらから言えば,正誤を正しく判断できるし,また使用法も正しく説明できる。
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