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研究と報告
Paranoia-frageに関する一考察—「漱石の病跡」より
Eine Bemerkung zur "Paranoia-frage" : Aus der Pathographie des NATSUME-SOSEKI"
千谷 七郎
1
S. Chidani
1
1東京女子医大精神神経科
1Aus "Tokio Women's Medical College. "Psychiatrisch-Neurologische Abteilung.
pp.895-901
発行日 1964年12月15日
Published Date 1964/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405200770
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本日は「憂うつ症」がシンポジアムに選ばれましたので,これに関連して多少の所懐を述べさせていただきたいと思います。かねて私は躁うつ病に対する理論をもう一歩深めるということが,とくにわが国の精神科診療にとつてはなはだ緊急事であるとしだいに確信するようになつておりますので,この機会にこのことに多少でもふれることができればと願つております。ことにこんにちの精神分裂病という診断の,途方もないと思われるほどの膨張,拡大のありさまは,それはJaspersがすでに指摘したごとく,Bleulerの精神分裂理論に影響されているところが多いとはいえ,まつたく眼をおおいたくなる,といいたくなるほどです。
そこで,この1時間ばかりの講演で,多少ともこの問題の一端でも有効に取り出すことのできる便宜の方法を,と考えまして,漱石の病跡のなかから問題を提供することを思いついた次第です。それと申しますのは,昨夏小著「漱石の病跡」が出版された当時,種々の方面から批評なり,あるいは書簡などによる感想なりをいただきました。それらのうち文学者や教育学者,評論家などのそれはここでは別と致しまして,われわれ仲間の専門家からの二,三を紹介することから始めますと,おのずから問題の所在にふれてくるかと思うからです。
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