Japanese
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研究と報告
てんかんの精神病理学的研究—1てんかん患者の絵画の分析を中心に
Zur Psychopathologie der Epilepsie
松橋 俊夫
1
Toshio Matsuhashi
1
1名古屋市立大学医学部神経精神医学教室
1Neuropsychiatrische Abteilung der Munizipale Universität Nagoya
pp.789-797
発行日 1971年8月15日
Published Date 1971/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405201790
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I.はじめに
てんかんについては,脳波学的見地からまたてんかん性性格からアプローチすることによって,またけいれん,意識消失などの発作を重視する立場から,あるいはそれらを相互関連的に位置づけることによって研究されてきている。
しかしながら,てんかん病者の世界を引き出しているとして周知の,ドフトエフスキーの『カラマーゾフの兄弟』の文学的記述,ことに「ロシア人(カラマーゾフ)の心は極端な矛盾を両立させることができ,二つの深淵を同時に見ることができるのです。――我々の上にある天上の深淵と,我々の下にある最も下劣な,悪臭を放つ堕落の深淵とを見ることができるのであります。」「……まったくカラマーゾフは2つの面を備え,両極端の間に動揺する天性をもっております。」などと表現されるてんかん病者特有のまことに不可思議ともみえるアンチノミーの世界に対する積極的な精神医学約追求はまだみられないように思われる。ただし過去においては,K. Jaspers,E. Minkowski,F. Minkowska,S. Freud,H. Ey,H. Tellenbach,D. Janzなどの研究が断片的にではあるが,てんかん病者の特有な存在様式に言及している。
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