巻頭言
たてとよこの論議
佐藤 壱三
1
1国立国府台病院精神科
pp.550-551
発行日 1971年6月15日
Published Date 1971/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405201758
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最近,人間関係がこれまでの“たて”に代って“よこ”になりつつあるといわれている。毎年行なう看護学生への精神衛生の講義の間に,彼女らが答える結婚の意味にも,次の世代への関係をあげるものが年々減少する。これに“たて社会”の終りを感じるのは,いささかわが感覚の古さの故かとひそかになげきもするこの頃であるが,今精神科の学会が,新旧会員の間の断絶で混乱し,正常のかたちでの運営が困難を極めていることも,こうした社会の動きに最も敏感な医師の集まりの故と思えば,大いに先駆的なこととして,理解,評価出来ないこともない。
しかし周囲の声をきくと,これはどうも精神科というせまい“たて社会”での出来ごとと理解されている面も多いらしい。周囲,つまり常識的に一つひろがった“よこ社会”としての一般医師社会から見ると,学会の混乱はこの社会の異端の徒の間の出来ごとであり,やっぱり精神科医は,などとおよそわれわれの期待しない偏見の助長に役立っている面も否定出来ない。
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