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伊東氏の投稿を読む
宮本 忠雄
1
1東京医科歯科大学精神神経科教室
pp.86-87
発行日 1971年1月15日
Published Date 1971/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405201703
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私が本誌の第12巻第9号に「新ハイデルベルク学派をめぐって」を発表すると,まもなく多くの方々からいろいろな反響がよせられました.これらの反響を大きく分けると2種類になり,その1つはこの「学派」の認定や人的構成に関する異議で,たとえば内村祐之先生からはまっさきに,「(第1次の)ハイデルベルク学派としてJaspersやGruhleが入っているのはわかるが,K. Schneiderが当時彼らといっしょに活動していたというのはまちがいではないか」といった指摘をうけました.もう1群の反響は主として若い方々からのもののようで,ハイデルベルクの精神科が近年たどりはじめている分極化の現象,なかでも50年代に主流だった現象学的・人間学的方向から社会的方向への転換ないし推移を日本の学界の現状などに対比しながら感慨をつづるといった種類のものでした.
伊東氏の投稿は,「二,三の印象を得たので筆をとった」と書かれているように,読後感をかなり自由にしたためられたもののようです.それだけに何を言わんとしておられるのか必ずしも明瞭ではありませんが,氏の文章の行間を読めば,私がハイデルベルク「学派」とかspiritus heidelbergensisと既成の概念ででもあるかのように語った事柄にたいする一種婉曲な批判のように受けとれます.とすれば,これは先ほど述べた第1群の反響のほうに入るかと思います.
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