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藤田氏の論文を読んで
馬杉 保
1
1大阪市立大学精神神経科教室
pp.834
発行日 1963年10月15日
Published Date 1963/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405200624
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藤田氏の論文を読んで思うことは,まず第1に著者の論文をよく熟読されたなれば,藤田氏のいうこの論文に対する疑問は起こらなかつたものと考える。
さて著者の論文の主旨は,森田療法の実施がわが国のみならず広く欧米にも普及されることを念願して,その実際の手技を理解しやすいようにゲシタルト論論を応用して説明したものである。また森田療法を実際面に用いている医家であれば,当然わかるごとく,主体は治療者自身であり,また実体を失うという主体もまた治療者を指している。またとくに治療にあたり言葉で表現すれば実体を失うということは,少なくとも実際に本療法を行なつた経験のある者には,よく体験される困難さであり,純主観的の状態を言葉でいえばすでに虚構となる。いわねばわからず,いえば実体を失うというこの呼吸を治療者によく会得してもらうために,ゲシタルト理論を応用したのが本論文の目的である。そしてまた神経質の「理論」の理解だけでは,決して実地に応用できないと私は考える。この点藤田氏は神経質理論の理解即療法に直結するといわれるが,実地家の言としては受けとりがたい。他の技術的療法においても,その理論のみの理解で,そのまま治療が実施できるとは,少なくとも実地家は思つていないと同様である。
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