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本誌12巻・1号(1970年1月号)の巻頭言「我亡霊を見たり」(西丸四方)を読んで,私は“やっと本音が出た”と感じて,大変うれしくなった。しかも“もっとイサマシクやってくだされたらもっとよかったのに”と感じたのは私だけだろうか。もっとも“亡霊”なのだから,力が弱いのは当然かもしれないが。しかし“起爆剤”の役目ははたしてくれたものとして,高く評価するのにやぶさかでない。そこで今度“二番バッター”を買って出て,もっとイサマシク口ゲバをやってみよう。“怒れる若者達”におとらずに。
“一体わが国にホントに「臨床精神医学」があったのだろうか”。これが私がぶっつけたい口ゲバの第一弾である。「精神病学」が精神医学に変わって,はたして“中身”も変わったのか。私は“質”の問題を問うているのであって“量”のことではない。たしかに間口は広くなった。しかし私はわが国のPsychiatrieは依然として「精神病-学」だと思う。「精神-医学」はpsychological medicine――この旧い英国流のコトバ。日本の精神科医にはそれこそ“亡霊”としか映らないコトバ――ではないのか。SeelenheilkundeやGeisteskrankheitenはどこへいってしまったのだろうか。私は毎々くり返して言っているように,ドイツ語が苦手なので,誰かその達人に説明して貰いたい。Heinroth*やIdelerの精神学説が排斥されて,Kraepelinが“生物学的(自然科学的)精神医学”を建設したとき,これらのコトバも同時に追放されて,Psychiatrieが採用されたのではないだろうか。しかしそれは学者先生方の意識革命ではあっても,民間のそれではなかったと思う。
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