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保険医総辞退と学生ゲバ
桐沢 長徳
pp.1888-1889
発行日 1971年8月15日
Published Date 1971/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410204648
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○あれほど世間をさわがせた学生ゲバがすつかり影をひそめたと思つていると,これに代つて(?)目下ジャーナリズムを賑わせているのが保険医辞退さわぎである。この二つの問題がまさか関係があるとは思えないようであるが,よく考えてみるとそうでもなさそうだ。殊に学生ゲバの発端は医学部のインターン問題から始まつたのであるし,保険医辞退は医者が主人公であることから,われわれ医師としては共に大問題である。しかもそれがどのような共通の問題をもつているのであろうか?
○学生ゲバは「わけもわからぬ,わがまま学生が……」と批評されがちであつたが,保険さわぎは最高の知識人と見なされている医師の集団が始めたことであるにも拘わらず,共に「何のためにやつているのかさつぱりわからぬ」という批判を受けがちなことは同じことである。学生の代表が例の紋きり形の闘争用語で絶叫しても,聞いている方には何とも理解できなかつたが.医師会代表の武見会長のテレビでの話は仲々筋が通つているようにわれわれには思えるのだが,一般民衆からはやはり理解されにくいようである。学生が教授をつかまえて「お前」呼ばわりをしているのをみて,日頃威張つている(?)教授連が低姿勢で答えている姿に快哉を覚えた民衆の気持と.最高の権力者として羨やまれている大臣が武見会長の前では教えを乞うような姿でかしこまつているのを見て喜んでいる聴衆の気持には共通した気分があるようであつた。
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