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西部ネパール民族文化調査隊(隊長田村善次郎,武蔵野美大社会科学研究室)のメンバーとして1967年11月-1968年3月までNepal王国西部山岳地帯住民について行なった,比較精神医学的調査の結果中,とくに宗教精神病理学的事項に関して報告した。Nepal住民の大多数はヒンドゥー教徒であるが,西北部山岳地方ではジャンクリズムと呼ばれる特有の民間信仰の形態をもつ。この地方のヒンドゥーイズムの担い手には三種あり,第1は集落の小祠の管理,祭儀の執行に任ずる祭司(Pujali)で,第2および第3の範疇に属するのは祈禧師(Jancri)および呪医(Dhami)とよばれるshamanあるいはexorcistであって,彼らは一定の方式に従って降霊を行ない,神と人との媒介をなすことによってJancrismの信仰形態を維持する。ジャンクリは一定の集団をなし,修行によってexorcistとなったものであり,ダミはもっぱら魔法医としての仕事に任じ,一定の師弟関係なく,集団をなさず多くの場合突発的なecstasyの体験を契機にexorcistとなったものである。
われわれが調査した8例のダミのうち,1例はてんかん発作が,1例はマラリアによる熱性せん妄がダミになる契機となっている。彼らは祈祷によって神を呼び下すとともに憑依状態となり,神の幻覚を見ることが多いが,プジャリは見神,忘我を体験することはなく,ダミが人格神との体験的出合いを信仰内容とするのに対し,より体制的な信仰の担い手である。ロールシャッハ検査で前者が(H)↑,religion↑,M↑で後者はreligionの内容がArch. Objであり(H)↓M↓であることからもこれは示された。
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