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研究と報告
Defektonの臨床適応に関する批判的論考—いわゆる「分裂病欠陥状態」の精神病理学的考察
Kritische Bemerkungen uber klinische Indikation von "Defekton".: Eine psychopathogisch-kasuistische Untersuchung vom sog. schizophrenen Defektzustand
木村 敏
1,2
,
山村 靖
1,2
Bin Kimura
1,2
,
Osamu Yamamura
1,2
1京都大学医学部精神科
2水口病院
1Aus der Psychiatrischen und Nervenklinik der Universität Kyoto
2Minakuchi-Hospital
pp.229-234
発行日 1968年3月15日
Published Date 1968/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405201309
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Ⅰ.緒言
わが国で開発された最初の向精神薬Defektonについてはすでに多くの治験報告が見られるので,その薬理学的特徴をあらためて述べる必要はないと思う。木剤の臨床適応については,最初に本剤を紹介した諸家によつて分裂病欠陥状態ないし陳旧分裂病に対して特異的に奏効する旨の報告がなされ1),以後の諸報告1)もおおむねこの線に沿つた検討をこころみている。しかしある化学物質が分裂病,それも陳旧欠陥性病像に対して特異的に奏効するということは,分裂病の精神病理学に携つている者としては看過しえない重大問題であろう。
著者2)は従来から,向精神薬の臨床的評価にさいしては単なる没主観的数量化を志す客観的自然科学的薬効判定は無意味であり,確固たる臨床精神病理学的疾病学的見解にもとづいた綜合的人間学的考察のみが,人間の病である精神病と人間である医師の行なう薬物療法との間の正しい関係をとらえうるものであることを主張してきたが,かかる観点からDefektonの臨床適応を考えてみると,その結論はかならずしも従来の諸報告とは一致しないことが判明した。そこで以下において本剤が「特異的」に奏効した数例の病歴を比較的詳細に記してその精神病理学的位置づけをこころみたいと思う。症例はいずれも著者らの勤務する水口病院の入院患者および京大精神科の外来患者である。病歴記載にあたつては,精神病理学的に重要な事項を主とし,既往症,遺伝歴,身体所見などに関して特記すべきもののない場合には記載を省略した。
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