特集 精神分裂病の診断基準—とくに“Praecoxgefühl”について
第63回日本精神神経学会総会シンポジウム
はじめに
井村 恒郎
1
1日大神経
pp.85-86
発行日 1967年2月15日
Published Date 1967/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405201145
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分裂病の診断のむずかしさということはご承知のとおりであり,分裂病の症状は教科書に列挙してあるけれども,実際に診断するときにはそれらの症状をいくつか合わせて,つまり算術的に加算して,それでpathognomischなSyndromとみなすわけにはいかない。症状にしろ症状群にしろ,他の病気に共通なものがたくさんある。その反面,個々の症状をみると,そこに分裂病に固有なニュアンスがあつて,分裂病らしい幻覚,分裂病くさい妄想というふうに,tautologischな形容詞を付けざるをえないことが多い。全体集会では,分裂病に関するNosologieの話が十分行なわれたが,Nosologieよりもさきだつ問題として診断の問題がある。分裂病の診断の基準をどこにおいたらいいかということは,実はご承知の方もおられると思うが,精神病理懇話会——いまの精神病理・精神療法学会の前身であるが——そこで十数年前ちようど同じテーマで行なわれた。そのときに,むろんはつきりした結論は出なかつたけれども,精研グループの実験的な報告を私がした記憶がある。分裂病の診断にさいして個々の症状のあるかないかという点に関しては,診断者によつて非常に差異があつて,不一致率が非常に高いにもかかわらず,しかもなお分裂病という診断はよく一致しているという発表である。分裂病の診断には個々の症状に加味してなにか一つの共通のfactor——X factorとそのとき名づけたのだが——そういうものがあるのではないかということを話した覚えがある。
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