特集 内因性精神病の疾病論
第63回日本精神神経学会総会シンポジウム
はじめに
村上 仁
1
1京都大学精神科
pp.4
発行日 1967年1月15日
Published Date 1967/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405201129
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ではさつそく木日の午前中のシンポジウムをこれから開催させていただきます。このシンポジウムのテーマは「内因性精神病の疾病論,ノソロジー,ことに精神分裂病を中心にして」というのでありまして,これはわれわれ臨床精神医学会を専攻する者にとつてもつとも関心のある大きい問題であり,しかも現在でもいまなお十分に解決されていない問題であります。まず分裂病の疾病論とは何かということでありますが,結局それは分裂病が一つの疾患単位(Krankheiteinheit)なのか,あるいはいろいろな疾患の疾患群であるのか,つまりE. Bleulerのいわゆる分裂病群(Gruppen der Schizophrenien)といつたものであるのか,あるいはまた単なるSyndromにすぎないのか,そういうことが問題の中心になるのではないかと思います。
そしてまた内因性精神病が一定の疾患あるいは疾患群であるとしましても,それがどういう本質のものであるか,どのような疾患または疾患群であるのか,そういうことが問題にされなければなりません。この点につきましては,臨床遺伝学の立場から井上教授が,臨床的観察の立場から黒沢教授が,あるいは広い意味での病因論的立場から島崎教授がくわしくお話になると思います。しかしこういう問題が現在でもはつきりまだ解決されていないということのいちばん大きな原因は,内因性精神病,ことに分裂病においてまだはつきりした身体的基礎(Somatic base)が明らかになつていないということにあるのではないかと考えます。
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