特集 宗教と精神医学
第63回日本精神神経学会総会シンポジウ厶
指定討論
加藤 清
1
1京大精神科
pp.923-924
発行日 1966年11月15日
Published Date 1966/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405201099
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宗教と精神医学というまつたく精神医学にふさわしい主題のもとで,宗教より信仰をひき出し,精神医学からは精神病理的現象として幻覚をとり出して,この二者をどのようにつきあわして論ずるかがいま.要求されている.わけです。ただ問題になるのは,宗教と精神医学では,そのおのおのの根源において人間を多元的に理解しようとして互いに微妙に相呼応しあう点が,共通点として,漠然とながら直観的に感じられるのに反して,信仰と幻覚というようにテーマが限定されてくると,このテーマの内実をそこなわずに,はたしてこの問題を伝統的な宗教精神病理学の枠内で取り扱えるのかという危惧の念が生じてきます。これが,私にとつてひとつの重荷としてのしかかつてくるのを感じます。いま,演者はこの問題を疾病学,現象学,人間学というふうにいわば下から上への方向に,病的宗教的現象の叙述を進めつつ,ひとつの視点のもとに考察し,しかも,これをFranklの立場を採用して統一的に理解できることを示されました。そこにはひとつの人間学的観点が首尾一貫して暗黙のうちに用意されているように思われます。いずれにせよ,われわれにとつて,古くしてしかもつねに新しいこのテーマをさらに一歩進めて論究されることが求められている現在,まず第1に演者のこの点に関する見解を端的に表明していただければ幸いです。このことは,この種の患者の治療に従事している臨床家の根木的態度の育成にも資するところがあると思われるからです。
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