Japanese
English
特集 宗教と精神医学
第63回日本精神神経学会総会シンポジウ厶
離人体験と宗教信仰
Depersonalization and Religious Faith
土居 健郎
1
T. Doi
1
1聖路加国際病院精神科
1Dept. of Psychiat., St. Luke's International Hospital
pp.908-910
発行日 1966年11月15日
Published Date 1966/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405201094
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
I.宗教の心理的意味
歴史的社会はすべてなんらかの宗教を中心として発生してきたといわれる。すなわち宗教は社会を形成する各人を結びつける靱帯の役割をはたしてきたのであつて,古来の成人式が宗教的意義を有しているのはこのためである。しかし現代のように社会が宗教的思想的に複雑かつ混乱しているときには,子どもが成人して社会人となる過程において,宗教は表立つた役割を演じてはいない。それでも宗教的心理は潜在的にそこにはたらいているのであつて,ときには積極的に宗教を求める者もいるほどである。これら積極的求道者は宗教によつて精神的危機をのりきろうとする。しかし危機に破れれば,なんらかの精神障害を経験せねばならない。以下に記す症例Tは,診断的には分裂病圏内に属すると考えられるが,求道の過程で発病し,かつ求道の完成によつて治癒している点,上述の観点を裏書きしていると思われるのである。
Copyright © 1966, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.