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特集 宗教と精神医学
第63回日本精神神経学会総会シンポジウ厶
精神分裂病患者の宗教的関心について—キリスト教を中心として
On the Religious Concern of Schizophrenics
稲垣 卓
1
T. Inagaki
1
1鳥取大学医学部神経精神科
1Dept. of Neuropsvchiat., School of Med., Tottori Univ.
pp.903-907
発行日 1966年11月15日
Published Date 1966/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405201093
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I
日常の臨床において,20歳前後の青年で患者の症状をその青年期の精神的混乱ないし人生観的煩悶として理解することがある程度可能で,精神分裂病と診断するのにためらいを感じさせる症例に遭遇することはまれでなく,そのなかには宗教に関係をもつているものがある。青年期に発病する分裂病の一部のこのような初期症状と健康な青年の精神的混乱とがいかなる関係にあるかは分裂病の本質にかかわる重大な問題であるが,筆者は青年期における人生観的煩悶のひとつの指標として宗教に対する関心をとらえ,健康者と分裂病者の宗教に対する態度を統計的に比較しようとこころみた。
とくにキリスト教を中心としたのは,わが国の現状では人生観的煩悶をいだいた青年が宗教の門をたたく場台,もつとも訪れやすいのはキリスト教と禅宗であろうと考えたことによる。とくに欧米では宗教といえばほとんどキリスト教であり,幼児よりの宗教教育が青年期の精神的混乱のなかで宗教的回心conversionとして実を結ぶことが多い。しかしわが国では青年期にいたつて初めてキリスト教会を訪れるというかたちをとることが多いので,「教会に行つた」ということを指標にして宗教的関心,さらには精神的混乱をうかがい知ることが可能であるとみられるからである。
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