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研究と報告
嫉妬妄想について—分裂病者における共同体感情の障害についての考察(1)
Über den Eifersuchtswahn-Ein Studium über die Veränderung des Gemeinschaftsgefuhls in der Schizophrenic (1)-
小久保 享郎
1
T. Kokubo
1
1東京医科歯科大学神経精神医学教室
1Aus der Neuropsychiatrischen Klinik der Tokyo Ika-Shlka Universität
pp.479-483
発行日 1966年6月15日
Published Date 1966/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405201020
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I.序言
「嫉妬」は,これを広義にとれば,男女老幼を問わず,広く人間世界に(動物世界にも)みられる,ありふれた現象である。しかし嫉妬を定義することは簡単ではない。哲学的,心理学的に,古来そのこころみは多いが,むしろ文学作品のうちにたくまずして嫉妬の実体がなまなましく描き出されているのは興味深い1)。ここでは,箇潔にして要を得ていると思われるLagache, D. のつぎの言葉を示すにとどめる。「人は,自分が正当に所有すると考えている人間またはその愛情を奪われもしくは奪われる可能性に対して嫉妬する。」***
このような嫉妬が,正常なものか,病的なものかという区分けをすることはさらに困難な問題である。周知のように,Freud, S. 2)は嫉妬を 1)競争的な嫉妬または正常の嫉妬,2)投射された嫉妬,3)妄想的な嫉妬の3つに分け,Jaspers, K. 3)は,1)正常心理的嫉妬,および,2)病的嫉妬と,3)妄想的嫉妬,および,4)嫉妬妄想を対比させて区別したが,いずれにせよその分類の根拠は明確でない。ここではかかる本質論にはふれず,ひとまず「被害妄想の一種としての嫉妬妄想」として論を進める。
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