Japanese
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研究と報告
妄想の表現としての造形活動—1分裂病者の造型作品について
A case of Dementia paranoides
阿部 完市
1,2
1東京大学医学部精神医学教室
2川口病院
pp.303-308
発行日 1962年5月15日
Published Date 1962/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405200432
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約50年にわたつて,妄想をもちながら社会生活を維持しえた妄想患者について,その造型活動を中心として考察をこころみた。
その造型活動の代表的なものは,一種の宇宙理論である「宙針理論」という,分裂性心理をかなり具象的に表現している発明妄想と,常同的手法の連続をみせる仏像彫刻,その他,この「宙針理論」と仏教信仰とが混然一体となつて作製された造型物(「星と雲を頂く城」),それより以後,発生してきた被害妄想に的来する「宙針地蔵」の製作である。
そして,これらの製作過程ないし作品には,妄想着想,事物の平板化,単純化,有形化,呪術的思考の形成,また,世界像,万有への本態をえがきだそうとする強い衝動,常同症,感情ないし創造力の鈍化,自閉思考,被害妄想などの分裂性心理に特有な多くの因子が認められた。
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