特集 精神分裂病の“治癒”とは何か
第1回日本精神病理・精神療法学会シンポジウム
指定討論
安永 浩
1
1東京大学分院精神科
pp.210-211
発行日 1965年3月15日
Published Date 1965/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405200816
- 有料閲覧
- 文献概要
加藤先生は人間学的立場から問題をとらえられましたので,私もなるべくその範囲でと思つたのですが,実際はやはりもつと一般的な立場から話すようになるかと思います。その点初めにおわびしておきます。加藤先生も気楽にお話になりましたので,私も気楽な立場から2,3の疑問ないし感想を述べさせていただきます。
Wiederkehrende Kernsituationということをお話になりました。その要点は私の理解するところでは,患者が「自分がいままでどう生きていたのだろうか,また自分はこれから何を求めようとしているのだろうか」という,1つの生活史的というか,人生的な理解の構えをとつたということと,その内容がひと口にいえばHeimatlosigkeitの自覚であるという,その二つであるように思われます。そのこと自体は症例も非常に印象的であり,たいへん興味深く拝聴しました。これが,分裂病者が治癒するためには,いつか通らなければならない一里塚のようなものであるという理解は,重要かつもつともなことと思われます。疑問はおもに,それの一般性,ないしその治療的意味に関してであります。
Copyright © 1965, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.