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ここにその一部を紹介する“De medicina”(またはDe re medica)はラテン語で書かれた最初の科学的医学書である。その著者はAulus Cornelius Celsus,著作の年代はTiberius帝統治下のA.D.30年前後であろうとされている。通説によればCelsusはおそらく臨床医家ではなく,いわゆるエンサイクロペジストで,ほかにも農業,戦術,修辞学,哲学,法律に関する著述があつたが,「医学書」全8巻以外はすべて失われた。そしてこの「医学書」自体も中世においてはまつたく忘却されていたが,たまたま1478年,ローマ法王Nicolaus V世が入手した写本のなかから発見され,印刷出版されるにいたつた。古典文筆家のなかで最初に印刷される幸運に浴したのがCelsusその人である。HippocratesやGalenosのラテン抄訳が印刷されたのはこれより後,1483年のことであるという(Leibbrand)。
Celsusによりしばしば引用されているBithyniaのAsciepiades(c.124-c.40 B.C.)はギリシャ医学をローマに移植した功労者であり,医学的立場としてはDemocritosの原子論的傾向が強いといわれている。このAsclepiades門下にTitus Aufidius Siculusなる人物がおりかれのギリシャ語の原著をそのままラテン訳したのが本書であるとの説(Marx)があり,あるいはいくつかのギリシャ語医典を編集したのが本書だとの説もある。しかし一方においてde medicinaほどの完全で正確な体系はきわめてすぐれた専門家の手になるものに違いないとの説もすてがたい(Spencer)。
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