Japanese
English
研究と報告
異常脳波を示したヒステリーの2例—θ波の臨床的意義について
Two Cases of Converslon Hysteria with Abnormal EEG: Clinical Consideration of Theta Wave
中沢 洋一
1
,
大村 重光
1
,
生田 啄巳
1
Y. Nakazawa
1
,
S. Omura
1
,
T. Ikuta
1
1九州大学医学部神経精神医学教室
1Dept. of Neuro-psychiat., School of Med., Kyushu Univ.
pp.859-865
発行日 1964年11月15日
Published Date 1964/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405200766
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I.はじめに
てんかんをのぞく精神医学の領野においては,臨床脳波の所見に関して多くの報告がなされながら,こんにちにおいてもその全貌は明らかにされたとはいいがたい。とくに4c/sから7c/sまでの中間徐波に属するθ波については,古来多くの研究によつて精神症状との関係が指摘されているにもかかわらず,その臨床的意義ないしは発生機序については,こんにちにおいても決定的な知見に乏しい。
θ波のなかでも,発作性に群発する高振幅のもの,あるいは鋭波の型を呈するものは,てんかん性異常脳波の所見の一つと考えてよいのであるが,しかし,Hill以来多くの人によつて認められてきた,ある種の精神疾患や精神病質に記録される比較的低振幅の,持続的ないしは散発的なθ波の臨床的意義にについては,すでに述べたように現在においても結論的見解はえられていないのである。
われわれは,種々の精神疾患に見られるθ波の臨床的意義をよりいつそう明らかにするために,多くの症例について,縦断的および横断的な研究を行なつて検討を加えてきた。その詳細については,近くべつの機会に発表する予定であるが,今回われわれが報告する症例は,いずれも明瞭な心因によつて発現した著明なヒステリー症状の経過が,脳波に見られるθ波の変動といちじるしい相関を示した症例であり,θ波の臨床的意義を考察するさいに,一つの資料になるものと考えている。
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