Japanese
English
展望
Pathographie研究の諸問題(その1)—方法論的・原理的方面
Zur Probleme der pathographischen Studien.: I. Methodologische und grundsätzliche Aspekte.
宮本 忠雄
1
T. Miyamoto
1
1東京医科歯科大学神経精神医学教室
1Aus der Neuro psychiatrischen Klinik der Tokyo Ika-Shika Univ.
pp.561-575
発行日 1964年8月15日
Published Date 1964/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405200732
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Ⅰ.まえおき
Pathographieは,日本では,病誌・病跡・病績などと訳され,精神的に傑出した歴史的人物の精神医学的伝記やその系統的研究をさすことばとしてもちいられていて,精神医学ないし精神病理学の応用領域のひとつをなしているが,もとはといえば,いわゆる「天才論」の1部門として,古代ギリシャ以来のながい歴史から生まれ出たものである。それが科学的なかたちをとるようになったのは,ドイツの精神科医Möbius, P. J. の努力によるものであり,またPathographieということば自身も彼の著書『シェッフェルの病気について』1)(1907)のなかではじめてつかわれたものであるが,それ以後じつにおびただしい文献が世界各国から発表されている。こうして,こんにちでも,たとえば「精神病理学者に興味のある精神生活の側面を述べ,かような人間の創造の原因にたいしてこの精神生活の諸現象・諸過程がどんな意義をもつかを明らかにしようとする生活記録」というJaspers, K. 2)の表現や,「ある傑出人の異常な性格特性とそれが彼の人生と作品におよぼす影響を叙述するという伝記の特殊な一形式」というGruhle, H. W. 3)の定義がそのまま遵奉されているようにみえる。
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