これすぽんでんす
境界群らいの増加—白井氏らの論文を読んで
尾崎 元昭
1
1京都大学・長島愛生園
pp.624
発行日 1982年6月1日
Published Date 1982/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1412202660
- 有料閲覧
- 文献概要
近年わが国のらいの新患は著しく減少し,過去に隔離中心のらい対策が推進されたこととあいまって,皮膚科医がらい患者を診る機会はますます少くなる一方である.このこと自体は喜ばしいことといえるが,反面,らいの診断が遅れて驚くほど重症化した状態で専門医にまわってくる患者もめだってきている.らいの病像に関する基本的な誤りのみられる報告が散見するようになったのも,らいの流行の消褪がもたらした現象の一つとしてよいのであろうか.化学療法の進歩により,らい患者は一般医療施設で充分治療できる時代になっているだけに,皮膚科医の方々により一層,より正確にらいへの関心と知識をもっていただきたいと願うものである.
本誌36巻1号(1982年1月)に記載された報告1)の症例は,類結核型のらい(T型)とされているが,明らかに境界群(B群)の例と考えられる.この症例のような環状隆起疹の多発,打ち抜かれたように境界明瞭な環状疹内部に知覚障害を伴うことはB群の皮疹の基本的な特徴である2). このような皮疹は,皮膚組織液塗擦標本による菌検査で菌指数2〜4のことが多く,レプロミン反応は疑陽性ないし陰性をしめす.T型では皮疹はこのようにほぼ対称性に分布することはなく,環状疹の内部の境界はより不鮮明,菌指数は0〜1で菌陽性であっても短期間に消失する.
Copyright © 1982, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.