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I.いとぐち
与えられた課題はてんかんとその境界領域に関する総括的考察という尨大なものである。そこでまず討論の基地となるべきてんかん自体の脳波所見を検討し,その様相を再確認することが先決と考え,問題の焦点を境界疾患からしばらく離し,確実に臨床上てんかんと診断された自験症例の所見を中心として,臨床脳波の立場からみたそれらの脳波所見,ならびにそれの臨床像との相関についてのべ,終りにそれらを総括することとする。なお,報告内容を少しでも鮮明にしたいという考えから,明らかな非てんかん疾患群との間の差異について検討した成績も若干付記したいと思う。
こんにち,脳波上てんかんはcerebral paroxysmal dysrhythmiaとよばれている。この知見が臨床診断によるてんかんにどのような様相を呈してあらわれているか。そしてまた得られた脳波知見が臨床上どれほどの意味をもつものか。これが本報告のいわば骨子であるが,さててんかんの臨床診断は細部の点では必ずしも容易ではない。そこで一応,対象被検例の選択にあたつてLennoxのてんかんに対する見解に主として則ることにした。すなわち,意識・運動・知覚の諸機能はもとよりとし,そのほか精神・自律神経系などの諸機能の障害(いずれかひとつないしは2障害以上の混合)をともなう可逆的な間歇性発作をもつもの―である。この場合,くりかえしてあらわれる発作はあくまでも固定・常同化された主症状であり,発作間歇時期にとくにそれに代わる他症状を呈しないことは論をまたない。たとえば脳腫瘍などの進行過程をもつ場合や,あるいは誘発原因の明らかな熱性けいれんなどは除去したが,その反面では外傷性てんかんとか脳性麻痺などの後遺症から由来する発作例は対象としてある(次述の既往歴の項を参照)。
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