Japanese
English
研究と報告
失語症者における「いろは四十八文宇」の障害について
Disturbance of "I-RO-HA 48 Letters" in the Case of Aphasia
保科 泰弘
1
Y. Hoshina
1
1新潟大学医学部精神神経学教室
1Dept. of Neuro-Psychiat., Niigata Univ., School of Med.
pp.461-464
発行日 1962年7月15日
Published Date 1962/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405200455
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Ⅰ.緒言
わが国の失語症患者において,漢字に関する障害に比して仮名の障害がより顕著にあらわれることは,すでに諸家の報告に明らかなところである。この現象は,漢字が視覚的把握によつてそれ自体,象形的意味をもつ表意文字であるに対し,仮名が単音および音節の混合より成つており,内言語化から形象化の過程を必要とする表音文字であることから,多く説明されている。阪本は視覚的影響の重要性を指摘し,木村あるいは小谷もそれぞれの報告を行なつている。
これら漢字仮名問題の追究にあつて,外国語のアルファベットに対比さるべきわが国のいわゆる「いろは四十八文字」に関して,従来あまり強い関心は寄せられず,系列言語の一障害として簡単に取り扱われているごとく思われる。しかし,わが国における言語学的修得の過程をたどつてみるならば,この「いろは四十八文字」の障害は,四季,七曜のそれのごとく,等閑にふして考察すべき問題ではなく,既述の漢字仮名問題とも密接に関連し,また,知性論,反知性論の対立にあつても,重要な位置を占めるものであり,より厳密な分析がほどこされねばならぬと考える。
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