研究と報告
てんかん患者に対するBalance投与の臨床的経験
田椽 修治
1
,
徳田 良仁
1
,
後藤 蓉子
1
,
町山 幸輝
1
,
新井 進
1
1東大医学部精神医学教室
pp.325-331
発行日 1961年4月15日
Published Date 1961/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405200324
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まえおき
てんかんの薬物療法は,中世のなかば迷信的な草根木皮のたぐいに始まり,合成化学の進歩した現在では,考えられる多数の薬剤が抗てんかん作用についてのスクリーニングをうけ,さらに患者に試用されるという経過をたどつているが,その中には初めははなやかに脚光をあびて登場したにもかかわらず,経験的に淘汰されていつしか忘れ去られてしまつたものも多い。しかし,その結果現在われわれはBarbitur酸誘導体,Hydantoin誘導体,Oxazolidine誘導体,直鎖系誘導体やそのほかの有効な抗てんかん剤をもち,さらにそれらの適切な配合によつて,各種てんかんの治療は,すでにある程度自家薬籠中のものとなつた感がないでもない。1)
しかしその反面,臨床医にとつて,てんかん発作の抑制はおろか,てんかん患者の示す特有な性格変化の改善についてはなお満足のできない難治の症例の多いこと,またある場合には抗てんかん剤の投与によつて,発作抑制にもかかわらず,性格とくに情動面においては,投与前に比してむしろ増悪せしめたとさえ思われる症例に遭遇することは,すでによく知られた事実であろう。
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