研究と報告
Chlordiazepoxide(Librium, Roche)の臨床効果について
塩崎 昇吉
1
,
岡田 正勝
1
,
奥山 清一
1
1昭和医大神経科
pp.307-316
発行日 1961年4月15日
Published Date 1961/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405200322
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緒言
ChlordiazepoxideはRoche Research Laboratoriesで最近発見されたまつたく新しい向精神剤であつて,Roche自身の表現を借りれば,その化学的ならびに薬理学的特性は,従来その比類をみないもので,精細な論議に値いするものであるという,高い自信をもつて世に送り出されたものであるが,動物実験の結果によれば,野性的で兇悪な動物の恐怖や攻撃性を,その活動性や機敏さを害うことなしに制御しうるといい,人間に対する効果としては,不安あるいはいらだたしさがまつたく意識水準の低下や知性の鈍化をともなわずに弱められるという。また精神的のみならず身体的にも筋肉の緊張をやわらげ不眠をのぞき,時には強迫現象にまで有効であるなどかなり驚くべき効果が欧米の諸研究者によつてあげられている。ことに1959年テキサス大学医学部で,この薬剤がM. A. O. 抑制剤とならんでシンポジウムのテーマとしてとりあげられ,多くの学者によつてその効果が吟味されたが,ほとんど異口同音に本剤の効果のすぐれていることをのべていることは注目に値いすることである。
われわれはかねてより文献上で本剤の卓効を知り,その使用を渇望していたところ,たまたま入手の機会をえたので,比較的短期間ではあるが,その適応に十分の注意をはらいつつ能うるかぎり多数例に使用して一応その真価を知り,使用法に習熟する端緒をえたのでここに報告しようと思う。
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